どんぐりと民主主義—都道3・2・8号線問題から考える
オリンピック、交通、公共事業
中沢:だって、人口減っているでしょう。車、減っているじゃない。
國分:だいたいトヨタの社長は若い奴らに車が売れなくて困っている(笑)。
中沢:車自体も小型化しているでしょう。なんで36m道路が今必要なのだろうか。しかも不思議なことに行政が作った資料を見ると、だんだん交通量が増えているんですよ。
國分:そうです。本当に不思議な資料なんです。
中沢:本当に不思議な資料を作り上げるもんだなと思うんですけれど、今後のことを考えてみると、確実に車は減り、交通量は減ります。そうなると、それに関わる利害はどこか別のところへ行くわけです。
自動車のサーキュレーションが住民の利害に関わっていて、しかもそれが広域で非常に役に立つという論理があったとして、これが本当にリーズナブルなものだったら、住民も、それを共同利害として受け止めて、「そうしましょう」「みんなでしましょう」っていうことになると思うんだけど、しかし、今回のケースは理屈があまり通っていないっていうことなんだよね。
50年前の計画。50年間凍結されていた計画。それは50年間もつくらなくてよかった道路計画でしょう。しかも、車の数がうなぎ上りに増えているときに作らなかった道路ですね。そんなピークはとっくに過ぎて、自動車も人口も減る時に、50年間の凍結を解くのだとしたら、これは何かが起こっているに違いないと考えた方がいいと思うんですね。
なぜいまなのか? いま凍結を解かなきゃいけないのか?
おそらく来年から、東京ではいくつか凍結が解かれていくと思います。その時の理由がさっき言ったオリンピックです。オリンピックのために道路整備するという話になる。
しかし、凍結されていた道路計画をやり始めるための口実にオリンピックが利用されているにすぎません。そもそも多くの都民はこれに賛成していません。オリンピックやって国がきちんと経済的に発展したところなんてないんです。ロンドンを見てください。オリンピックやったおかげで大失敗しているじゃないですか。
オリンピックのための道路とか広域道路の必要とか、そのどれも説得力を持っていない。するとここで考えられるのは、こうした動きが公共事業を増やしていくという政策に結びついているのではないか、ということです。
これから、みなさんも自民党の市会議員や都議会議員に言っていかないといけない──「あなた方がやろうしていることはこれから国民に誤解されますよ。公共事業で金をばらまく昔の自民党に戻ろうとしていると誤解されてますよ」と。
そのぐらい強く言っていかないと、彼らは、「もういいんだ、昔に戻しちゃえ」と推し進めてしまうでしょう。
國分:3年前に政権交代が起こった原因を思い起こしておく必要があります。かつての自民党のやり方、つまり、ばらまき型の政策が無理になった。更にその反省のもとに、小泉純一郎の構造改革路線が現れて、それは経済成長率を1%上げるぐらいの成果はあったんだけれども、これも長続きしなかった。
こうして二つの道が断たれた時に、第三の道をなんとか用意しなければならないという形で行われたのがあの政権交代ですね。だからあれは国民が民主党支持したっていう話じゃない。もう必然というか、別の道を探すほかなかったわけです。でも、その別の道はどういうものか誰にも分かっていなかった。だから、みんなでつくっていかなきゃいけなかったと思う。そして多分、みんなで次の政治をつくっていかなきゃいけない時期ってまだ続いていると思うんです。
しかし結局、民主党自体が自壊していってしまい、こんなことになっている。とはいえ、いまもしかつてのような公共事業中心の政策に戻ろうという揺り戻しが本当にあるとしたら、これは政治の側が何も分かっていないということではないか。新しい次の可能性を考えなきゃいけなかったし、今、考えなきゃいけない時期だというのに。
(写真・加藤嘉六)
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編集注)
冒頭でお二人が言及された「不思議な資料」は、東京都作成の「道路の整備効果」(ダウンロード)です。
この資料の問題性については、資料のページに掲載の「資料編:交通量のこと」もご参照ください(連載途中です)。