第二回「道路か? 緑か? 東久留米市の都市計画の例」

12月5日(土)に開催した、小平市市民学習奨励学級「市民の思いが実現するまちづくりへ」第二回「道路か? 緑か? 東久留米市の都市計画の例」の報告をアップします。

2010年からの東久留米市都市計画マスタープラン市民検討委員会で委員長をつとめられた小泉秀樹先生と市民検討委員のお二人から、策定時のお話をしていただき、大変参考になりました。具体的な内容をお伝えしたくて、あまりまとめてしまわず、長めのまとめにしてあります。多くの方に報告をお読みいただけたらと思います。


小平市市民学習奨励学級「市民の思いが実現するまちづくりへ」第二回
「道路か? 緑か? 東久留米市の都市計画の例」

2015年12月5日
講師:小泉秀樹氏(東京大学大学院都市工学専攻教授)
コメント:桑原芳夫氏、田中直子氏(東久留米市民)
出席者:25名

■小泉先生のお話(東久留米市都市計画マスタープラン市民検討委員会委員長としての経験から)みんなが主役のまちづくりの実現に向けて」

2010年、当時の馬場市長から依頼され、「東久留米市都市計画マスタープラン市民検討委員会」の委員長を引き受け、委員15名と行政側とで都市計画マスタープランの見直しを行った(平成24年5月に発行)。

市町村が決める都市計画に限らず、より広い意味での都市計画のガイドにしたいと考えて作成した。本当は都市計画マスタープランではなく、様々な分野別計画を空間の側面から統合する「都市マスタープラン」という位置づけにしようと話していた。呼称は都市計画マスタープランになったものの、農業振興計画等や、都市計画決定済みで実質的に東久留米市に決定権限のない都市計画道路についても、空間作りに関わるものとして、都市マスタープランに明確に位置づけて進めようとした。

都市計画マスタープランは、全体構想と、より細分化した地域単位で具体的に記述する地域別構想の二本立てになっているが、以下の流れで、この二つを並行してまとめた。

①土地利用の現状、自然環境、産業、市民のまちづくりへのニーズの把握等の基本的調査
②市民検討委員会と庁内検討部会:全体構想の中間見直し骨子案の作成
③市民検討委員会と庁内検討部会:全体構想の中間見直し草案と地域別方針の中間見直し骨子案の作成
④作業部会:全体構想及び地域別方針の草案を詳細に検討
⑤作業部会、市民検討委員会、庁内検討部会:まとめ

問題点や課題の把握を行うために、①の段階で1回目、②の段階で2回目、④の段階で3回目の地域別懇談会を実施した。市民の意見を丁寧に取り込むために、地域懇談会を3回実施したことが特徴だ。2回以上意見を求めるのは原則で、1回だけでは、きちんとしたコミュニケーションが成立していると言えず、どう反映されたか確認が出来ない。ただし、地域懇談会の参加者は延べ230人と多くなかった。

また、②の段階で1回目のパブリックコメント、④の後に2回目のパブリックコメントを実施した。多くの自治体では②の段階ではパブコメをやらないが、この段階で行うのは大事で、出た意見をベースに案を作ることができる。④以降、細部の検討をするために市民検討委員会の中に作業部会を作って、委員会メンバーが自ら原稿を書いたのも特徴だ。

マスタープランの理念は、「豊かな水と緑に囲まれ、活力のある、住み続けたいまち 東久留米」だ。池袋から20分なのに、美しい湧水や緑が多く残っているのが特徴。2本の川も親水性が高く、日常的に水と緑に触れる機会が多い。水と緑を守ることは市民の共通認識になっており、これは東久留米で都市マスタープランを作る上で軸になった。 「都市の骨格図」を見ると、保全すべき緑の拠点の多さがわかる。緑と共存できる地域づくりが、他の都市との差別化で重要な鍵だということは、よく議論になった。

東久留米_都市の骨格図

都市の骨格図(東久留米市都市計画マスタープランより)

東久留米_道路ネットワークの方針図

道路ネットワークの方針図(東久留米市都市計画マスタープランより)

「道路ネットワークの方針図」に、東京都の優先整備路線(多摩地域における都市計画道路の整備方針〔第三次事業計画〕で10年以内に優先的に整備すると位置づけられている路線)がわかるように、色分けしたのも特徴。主要幹線道路・幹線道路・補助幹線道路を線の太さで分けた上に、整備済み、事業中、優先的に整備すべき区間、上記以外の区間(当面は整備されない)を、点線でわかりやすく表現した。他市では、単に都市計画道路を図示しているだけの例もあるが、それではイメージがしづらい。

道路整備の長期にわたるメリット・デメリットは、道路網の図だけでは見えてこない。こういう図によって、関係する市民も自分の生活がどう変わるか予見できる。道路の地域への影響について委員会でよく議論した。持続可能評価というが、道路はどこに作られるのか、そこには何があるのか、道路のネットワークとしてどういう形になるのかの段階を追った変化、道路をつくるインパクトについて考え、メリット・デメリットを検証しながら計画を考えようとした。

多くの人が緑の拠点と考えている地域に都市計画道路があった。特に自然へのインパクトが大きい部分について検証し、議論の俎上にのせて市のスタンスを明確に示さないと、事業化の段階での調整は難しいということをよく話した。地域で活動している生態系等の専門家にも情報をもらい、相当議論した。優先整備路線として部分的に整備が進められている3・4・18号線と竹林公園の交差部分、及び、一部整備済みとなっている幹線道路の3・4・12号線と南沢緑地保全地域の交差部分が焦点となった。交通網として本当に必要なのか? 交通シミュレーションまでは出来なかったが、南北の移動が確保できるかを検討し、3・4・13号線を通すことで、3・4・12号線をつくらなくても南北に移動できると考えた。また、西武池袋線の連続立体交差事業などを同時に進めなければ交通量をさばけないので、高架の検討が進んでいない箇所は、少なくとも急いで優先整備路線にする必要はないだろうと考えた。

道路ネットワークと守るべき自然の検討.jpg

道路ネットワークの方針図 (自然環境を守ることを前提とした区間の説明)

都市計画道路の指定を解除して欲しいという意見もあったが、現実的には難しいことから、折衷案について議論した。東久留米市の立場だけで都市計画の整備そのものを否定するのは都との協議ではロジックとして通りにくい。都の計画に即さないといけないという縛りもある。結論としてまとめた文章は、都市計画道路を整備しますが、条件は付けさせて下さいという表現になっている。

「本市の財産である南沢遊水地を横切る形で計画されている都市計画道路東3・4・12と、同様に竹林公園を横切る同東3・4・18の整備にあたっては、その環境を守ることのできる整備のあり方が明らかになるまで当該箇所(道路ネットワークの方針図:自然環境を守ることを前提とした区間)の整備を留保し、明らかになった時点において、それにあわせて整備を進めます」。

また、小山緑地についても保全を求める声が市民から上がり、「市内外を連絡する道路交通機能を担うことが期待される都市計画道路東3・4・21の整備にあたっては、小山緑地保全地域の自然環境を踏まえ、整備のあり方を検討します」という記述を加えた。

「地域別まちづくりの方針図」にも、凡例として「自然環境を守ることを前提とした区間」が入り、地区ごとの計画にもきちんと落とし込まれ、各地区の人が見てわかるようになっている。

行政や外部の専門家、市内で活動している専門的知識を持つ市民、さまざまな立場の市民が協力しながら都市マスタープランを作ってきたことは、その後、みなさんが協力するためのフレームワークであり、実際に共働のまちづくりが進まなければ意味はない。その後につながっているかどうか私は把握していないが、そのあたりを含めて市民のお二人からお話いただけるのではないか。


■桑原芳夫さん(市民検討委員会 副委員長)のお話

小泉先生が委員長となって策定された都市計画マスタープランで私がよかったと思う点は、以下の3点だ。

・メリハリをつけ戦略的に攻めるところは攻める、守るところは守るという方針。
・住民が主体的に作ることができる地区計画制度の利用をすすめている。
・都市計画マスタープランは、大きなまちづくりを描き、細部は書かない。細部については市民と交流の場を設けて詰めると随所に記述することで、以後のまちづくりに市民が関われるようになっている。

全体を通して、異なる市民の立場が収斂されていく、ということが重要だと思う。市民が多様な意見を話し、それを聞く場を作り、市民が常日頃から継続的にまちづくりに関わり、自分たちで収斂させていくことができたらよいと考えます。その基本になる都市マスタープランは重要だと考えています。

■田中直子さん(市民検討委員)のお話

改訂前の平成12年の旧都市計画マスタープランでは「市民参加」を理念としており、また自然環境の保全の両立ができるまで都市計画道路の整備を留保すると明記していた。

今回の都市計画マスタープランでは、さらに1歩進め、私たち自身が当事者であり、「子どもたちの将来に負担を残さないよう、持続可能な市の発展の一翼を担って『みんなが主役のまちづくり』を進めます」ということを理念としたことで、個所を明記することにつながった。

その前提となっているのが、市民の自然環境を守る具体的な活動の実績だ。湧き水のある川を甦らせて親水性のある整備にし、工事の際にもいきものを保護した。また、市民が主体となって水辺公園を作り、生態系に配慮した管理をしており、調査や環境教育、市民による地域学講座も行われている。川を清掃して川に入る企画も22回続けられている。行政としても20数年間続けられた具体的な実績を無視できなかったから、「自然環境を守ることを前提とした区間」を指定することができた。東久留米にとって大事な場所を次世代に残したいという声が出たときに、守っていこうという展開ができたのだと思う。

緑の基本計画においても、都市計画マスタープランをもとに、緑地の保全と都市計画道路について同様の方針とした。都市計画マスタープランが議論の前提となった。

その後、市民主体のまちづくりを進めるところまでできていないのが残念だ。ただ、マスタープランに緑地保全の文言を入れたことは大変役立っている。その文言を市民が主体的に書く場があったことも大事だ。小平市でもこれからマスタープランへのパブリックコメントがあると思うが、策定も含めて市民が協働できるしくみづくりをやれるといいと思う。

以上(奨励学級企画チーム)