小平市都市計画マスタープラン中間まとめを読む(その1) 小平市の都市計画マスタープランの進め方について

小平市では、現在、小平市都市計画マスタープランの改定を進めており、現在、中間まとめが公表されており、4月25日まで意見募集していた。

都市計画マスタープランとは、何か? ほとんどの人には馴染みがないものだろう。1992年の都市計画法の改正で、18条の2に「市町村の都市計画に関する基本的な方針」として位置づけられ、一般的には、市町村都市計画マスタープランと呼ばれている。市町村の上位計画である長期基本構想や、都道府県の都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(都道府県マスタープラン)に即すものとされているが、国交省の都市計画運用指針(H28年4月改定)のP29によれば、住民に最も近い立場にある市町村が、その創意工夫の下に住民の意見を反映し、まちづくりの具体性ある将来ビジョンを確立する、と記載されており、市民参加が保障されている。対象期間としては、概ね10年先までとされ、10年毎に見直しが行われている。

都市計画運用指針(H28年4月改定)のP29によれば、以下の内容で構成される。

・まちづくりの理念や都市計画の目標
・全体構想(目指すべき都市像とその実現のための主要課題、課題に対応した整備方針等)
・地域別構想(あるべき市街地像等の地域像、実施されるべき施策)

小平市では、昨年平成27年度から見直しを進めており、現在全体構想の案がまとまったところで、4月25日まで意見募集して、本年度いっぱいで、全体構想と地域別構想をまとめる予定で見直しを進めている。

都市計画マスタープランは、小平市の立場で自由につくれるものではなく、出来る事に限界があることは事実だ。「東京都の開発計画だから、小平市には権限がないから出来ない」と、小平3・2・8号線の住民投票の際にも、市長はそのような態度だった。東京都の都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(都道府県マスタープラン)に即してつくらなければいけないとされている。しかし、市町村によって都市計画マスタープランの質は大きく異なり、東京都の開発計画についてどこまで踏み込んで記載するか、市町村の姿勢があらわれる。小平市の場合は、残念ながら、都市計画マスタープランに記載した東京都の開発計画について市民が賛同したアリバイとして、活用している点が目立つ。

例えば、小平市3・3・8号線についての小林正則氏回答小平市3・3・3についての文書質問書及び回答書であるが、いずれも小平市都市計画マスタープランを引用している。多くの市民が開発計画に賛同しているかというとそうではなく、それ以前に計画があることを認識すらしていない人が多く、住民不在の開発計画に疑問を持った私たちの会の直接請求により、小平3・2・8号線については住民投票に至った。前回の平成19年度の都市計画マスタープランの改定の際に、市民の意見を計画にとりいれる努力をして、市民への周知を行えば、別の形になったかもしれない。それだけに都市計画マスタープランに市民の意見を反映することは重要だ。ブログを読んでくださった方は、是非、都市計画マスタープラン中間まとめに意見していただきい。

さて、今回の都市計画マスタープランの改定の進め方に話を戻したい。以下のように見直しがすすめられている。

都市マス_誰がどうやって見直ししているか

市民のニーズ、要望の抽出のため、2,000人の市民への無作為抽出アンケートの実施して594件回答をえており、そのアンケート回答者によるワークショップや、まち歩きをおこない、市民が考える小平市の課題や、あるべき姿などの情報を抽出している。その結果を元に、小平市の都市計画課の事務局と学識経験者、まちづくりに関係する4つの団体の代表と公募市民4名からなる小平都市計画マスタープラン見直し委員会で、見直しの方向性を議論し、小平市都市計画課が原稿をつくり、見直し委員会及び小平市議会の都市計画マスタープラン全体構想特別委員会で市議の意見もフィードバックして、今回の小平都市計画マスタープラン改定中間まとめの公表に至っている。無作為抽出という方法は、参加したい市民が参加出来ないデメリットはあるが、無作為であるが故に、市民参加したい人の強い意見に偏らないという意味でメリットもあり、ひとつの考え方であり問題はないと思う。

市民アンケート結果は、内容が充実しており読むのが大変だ。市民の意向をまとめているP49、P50の図を下記に抜粋した。

49ページ-3

49ページの下

50ページ

(※画像はクリックすると拡大します)

この結果からわかることで、主にまちづくりに関係することをあげると、幹線道路の整備(No.6)については満足度、重要度も平均的であるが、自転車や歩行者の通行のための整備(No.8)に改善が必要と考える市民が多い。農地、雑木林、緑地の保全(No.14)や用水(No.15)の保全などは、満足度高く、引き続きの保全が求められている。改善項目としては、駅周辺の商業地として形成のあり方(No.2)は特に要望が強く、その他、駅前広場の整備(No.10)、道路や公共施設のバリアフリー化(No.11)、まちの死角や暗さなどの防犯への対応(No.13)、災害時の避難場所・避難経路の確保や建物の耐震化などの安全性(No.12)など改善を求める意見が多いことがわかる。

その他、自由記述のアンケートの回答が、P78から255名の431件の意見が記載されているが、431件も意見があったことに驚いた。その内容も、共感できるものから、こんな主張をする人もいるのだと思わせるものまで多様だ。多様な住民の意見をまちづくりに反映させることを目的に活動をしているが、このアンケートを読むと、意見の反映は簡単ではないことがわかる。いろんな市民がいるので、市の担当者の苦労がわかる。都合の良い意見を取り入れ、都合の悪い意見は黙殺することも出来るが、多様な市民の意見の反映に努力していただきたい。

なお、反映させる会で行った直接請求による小平3・2・8号線の住民投票についての記述も5件あった(P79、P85、P93に2件、P94)。4件が住民投票の結果が開票されていないこと、市民の声に耳を傾けないのはおかしいという指摘、1件は、3・2・8号線計画を見直して欲しいという趣旨のものがあった。これは、無作為抽出で選ばれた人だけが回答できるアンケートであり、私たちの会の市民が回答したものでないことを改めて説明しておく。

無作為抽出で選ばれた2000人の対象者の中から、希望者による市民懇談会(まちづくりカフェ)を8回行っている。市民であれば誰でも参加出来る形も考えられるが、小平市はアンケート回答者に限定して、参加者の意見が偏らないようにしており、これもひとつの考え方と言える。まちづくりカフェ8回の市民懇談会(まちづくりカフェ)の概要である。

  • 第一回 4グループに分かれ、無作為抽出市民アンケート項目について、重要度が高く、満足度が低いものについて、アンケート結果との違いなどについてのグループディスカッション。
  • 第二回 第一回で議論を深めたい項目についてワールドカフェ方式でディスカッション
  • 第三回 鉄道駅ごとのイメージについて、生活拠点を活性化するアイディア、まちのあり方、商店街の課題、大学とまちの関わり、緑のあり方、居場所作り、自治会の強化、公共交通などのテーマについて、各グループで異なる話題でディスカッション
  • 第四回 前半は小平市でどんな暮らしがしたいか? そのためには何が必要か?、後半は、小平市の7つの駅の拠点ごとのあり方についてグループディスカッション
  • 第五回 小平の魅力だと感じていること、小平の不便さを感じていること、小平の魅力を活かして、どんな暮らしがしたいか?についてディスカッション
  • 第六回 第七回のまちあるきの準備として、地図上で参加者が住んでいるエリアの気になるところ、改善点、こんなことはできないか?などディスカッション
  • 第七回 東西2グループに分けて現地見学のフィールドワークと振り返り
  • 第八回 西側は、新たな西のグリーンネットワーク~みどりでつながる人と人、東側は、あかしあ通りグリーンロード化プロジェクトというテーマで、アイディア出しや、自分が出来る事についてなどディスカッション

参加人数の記載はないが、写真が出ている回の様子を見ると20-30名程度。50代以上の方が多く、男性が多いように見える。参加市民が無作為抽出の市民だけに限定しているにしては、偏りがあるように見えるのは問題であるが、現実参加者を集めるのは難しいのだろう。

次回は、小平市都市計画マスタープラン中間まとめが、無作為抽出アンケートと、まちづくりカフェでの意見がベースになっているか、見直し検討委員会の意見が反映されているか?についてと、主要な開発計画と、保全すべき環境をふまえて、多摩地区の近隣市のマスタープランとの比較も行いながらブログにまとめたい。

(文責 神尾直志)

広告