小平市の都市計画マスタープランは、H26年度からH28年度、三年間かけて見直しが行われている。今年が最終年度で、第9回小平市都市計画マスタープラン見直し検討委員会(平成28年7月14日開催)【議事資料】でいよいよ地域別構想の骨子案が示された。
この地域別構想の骨子案の説明と、市民の意見の反映ということで、まちづくりサロンなるワークショップが、H28年6月30日(木)、7月6日(水)、7月19日(火)、8月9日(火)と4日間、いづれも18:00から公民館などで開催された。参加者は、4階のワークショップで、1名、2名、3名、9名だったそうだ。市民参加が進んだとは言えない人数であり、小平市のやる気が疑われる。そもそも何故、平日の夕方しかも18:00という時間設定なのか。
地域別構想骨子案では、小平市を西地域、中央地域、東地域と3つに分けて、それぞれに地域の特色をまとめて、まちづくりの方向性を示すというまとめ方になっている。西地域では、小川駅西口の再開発が具体的に記載されたので、このブログでは、小川駅のフォーカスしてまとめていきたい。
地域別構想の西地域の記載ではっきりわかったことが、小川駅前周辺地区まちづくりビジョンにもとづいて再開発をすすめたいという小平市の強い意志。小川駅前周辺地区まちづくりビジョンに記載された小川駅西口の再開発については、小平市都市計画マスタープラン中間まとめを読む(その2)にて2016年4月に詳細を記載したが改めて現時点での情報を元にまとめた。
地域別構想骨子案は、第9回の都市計画マスタープラン見直し検討委員会の議事資料として公開されている。小川駅周辺の記述はP13にある。都市計画マスタープラン見直し検討委員会の第9回での議論、6月議会における市議の小川駅西口再開発についての質問に対する市の回答など、公開情報をまとめた。また現地の視察を行い、再開発のあり方について考察した。
地域別構想骨子案の小川駅周辺のまちづくりの基本的な方向性としては以下が上げられている。主体性がない記述方法が気になるが、何がしたいのかはよくわかる。
- 小川駅西口地区の市街地再開発事業に向けた検討が進んでおり、にぎわいの創出や生活利便性の向上が図られ、西地域の大きな拠点としての役割が期待できます。
- 小平都市計画道路 3・4・10 号線が優先的に整備をする路線に指定されたため、道路交通ネットワークや防災対策の向上などが図られます。
- 築年数の古い木造住宅の密集が見受けられる地域では、居住者の高齢化も進んでおり、まちの動きに合わせた改善が必要とされています。
- 株式会社ブリヂストン東京工場における開発・生産拠点の再構築により、民間活力を活かしたまちづくりが期待できます。
- 小川四番土地区画整理事業が検討されている地区においても、農地がもたらすみどりを 意識した住環境の形成に配慮します。
小平3・4・10号線についてはやがてブログでとりあげる。今回、自分が知らなかった小川四番土地区画整理事業なるものが、検討されていることがわかった。この内容については、本記事と直接的には関係しないので、いつか記載するとして、佐野郁夫市議のブログに詳細が書かれているのでそちらを参照してもらいたい。
さらに小川駅周辺のまちづくりには、民間活力を活かした新たな拠点づくりとの記載があり、以下のようにまとめている。
- 小川駅西口地区は、平成 26 年 2 月に市民、事業者、行政等によって策定された「小川駅前周辺地区まちづくりビジョン」に基づいて、西地域の新たな拠点の形成に向けたまち づくりを推進し、またこれらの大きな動きを契機として、まちの更新を図ります。
- 小川駅東側に立地している株式会社ブリヂストン東京工場においては、開発・生産拠点 の再構築が行われることから、これを契機に小川駅周辺地地区との共生について働きか けを進めます。
「小川駅前周辺地区まちづくりビジョン」に公開されているが、小川駅西口再開発準備組合の計画した107m、30階の高層マンションと、4階建ての商業施設と公共施設からなる案を前提に検討したまちづくりの方針である。
つづいて、都市計画マスタープラン見直し検討委員会の第9回の会議要録を見ると、P8、9に記載があるが、ようやく委員が意見を言う機会が与えられている。
- A委員の意見『前回、文言だけでは説得力がないから、提示できる絵があれば出した方が良いと意見したのは、具体的な絵を見ると、皆が「市は本気でやる気のようだ」「10年後にはこういうものができるのか」と思えるからです。10年が15年になるかもしれませんが、10年の間に先が見えるような形でイメージが湧くような絵は必要だと思います。』
- G委員の意見『私は西地区に住んで小川駅を利用していますが、まだ何もできていませんし、どう考えてもできないと思います。できないものをP13に絵で載せて「戦略的に取り組む地区のまちづくりの方針」として挙げて良いのでしょうか。10年後も何もできていないと私は思っています。』
A委員のような「小川駅前周辺地区まちづくりビジョン」の具体的な絵を都市計画マスタープランに示して、意思表示することに肯定的な意見もあるが、G委員のように、計画は実現出来ないと、まっこうから否定している意見もでている。しかし、小平市はこのまま「小川駅前周辺地区まちづくりビジョン」の絵を載せて、再開発の方向性として、都市計画マスタープランには記載して既成事実化するのだろう。
小川駅西口の再開発の進捗と課題については、6月の市議会でも佐野市議によって質問されている。小平市の回答から、H26年度の事業計画案を見直して、複数案が検討していることがわかる。
- 第1点目の小川駅西口地区市街地再開発事業の進捗状況でございますが、再開発準備組合では、平成26年度から事業計画案の見直しについて検討を行っており、昨年度は、新たに市民広場などの公共施設を導入した事業計画案を複数検討しております。再開発準備組合におきましては、この事業計画案をもとに建設事業者へのヒアリングを実施し、事業の実現性を検証した後、来年度内の都市計画決定に向けて都市計画素案を作成していく予定でございます。
- 第2点目の再開発事業の課題でございますが、事業成立が見込める事業計画案の作成が現在の課題でございます。市といたしましては、引き続き将来的な工事費高騰のリスクが懸念されますことから、今後も経済状況等を注視し、再開発準備組合に対してできる限りの支援をしてまいります。
複数の事業計画案で再開発を検討していること、工事費高騰による事業が実現しないリスクがあるという回答をしている。複数案があるなら、現時点で市民に公開して、市民の意見も反映される努力をしてもらいたい。市街地再開発事業は、市の補助金も使われる事業であることを忘れてはいけない。
自分も出席した8月9日の18:00に地域別高層骨子案を説明するのまちづくりサロンが小川西町公民館で行われたが、小川駅近くということもあり、小川駅についての話題が中心となり、西口再開発についてシンボルとなる高層ビルは必要ないのではないかという意見が、出席者からもたらされた。同じような意見が市の発行のまちづくりサロンニュースでも2ページ目の下の方に意見が記載されている(「小川駅の整備は東村山のマンション開発が進んでいるから急務」という意味がわからない意見と併記になっている)。市の担当者は、駅に車の乗り入れが出来ずに不便という声もあがっており、また小川駅西口はまちが古くなっているため、再開発が必要という説明をしていた。
H26年度9月に小平市議会のまちづくり検討特別委員会で公開された当時の事業計画案をGoogleマップに落として考えてみた。なお、H28年現在では、この計画は建設費高騰につき計画は再検討で中断している。
緑の斜線の部分が、1963年に都市計画計画決定されている駅前広場だ。ローソンストア100と、セブンイレブンなど商店が数軒、交番、日本通運の建物と空き地などが計画決定されているエリアだ。
それに対して、黒い枠で示した上側(北側)の長方形、約6,000m2と、下側(南側)の長方形約4,200m2で示したエリアが、小川駅再開発準備組合が計画していたH26.9.22の小平市議会のまちづくり検討特別委員会で公開した資料が示している再開発エリアだ。1963年の都市計画決定に対して大きくエリアを拡大しているのがわかる。下側(南側)が自動車乗り入れが出来る駅前広場の約4,200m2だ。たましん小平支店と昨年新しく立てられた7階建ての集合住宅建物までが再開発エリアに含まれている。黒い枠の上側(北側)が、30階、107mの高層棟(住宅棟)と、地上4階の低層棟(商業・非物販サービス)約6,000m2の建物がたつエリアとして示されている。
気付いたのは、都市計画決定されている部分に、予定通りに駅前広場をつくることが出来ない理由が見つからないということだ。行政はいつも言う。都市計画決定されている部分に道路をつくるのは進めやすい。建物に規制がかかっており、また都市計画法によって担保されているので、用地取得しやすいという説明をする。ところが、小川駅西口は、再開発エリアを拡げて高層化という方針がありきで、大きく拡大変更しているから事業がすすまないのではないだろうか。
この点について、8月9日のまちづくりサロンで市の担当者に質問した。高い高層マンションをたてるのは、デベロッパーが高層マンションの住居を販売することで、用地買収や建設費などの費用を捻出することが出来るが、都市計画決定されている緑色の駅前広場だけの工事となると、市の予算で用地買収や整備に必要な事業費を捻出出来ない、試算はしていないが難しいだろう、という回答だった。
果たして本当にそうだろうか?1963年に都市計画計画決定されている駅前広場の面積は調べきれなかったが恐らくおおよそ、3,000m2程度である。この面積が自動車乗り入れができる駅前広場として、十分かどうかは議論はわかれるだろうが、地図で見れば少なくても小川駅東口と地図で面積を比べると、Rが小さくなるかも知れないが乗り入れ用の周回サークルは取れるだろう。
3,000m2の土地の買収が小平市の予算で実現出来ないだろうか。H28年度の小川駅前の路線価から検討することが出来る。1m2あたりの単価が、27万円。路線価1.5倍で購入したとして、27万円 x 3,000m2 x 1.5 = 12億1千500万円。保障、補填、及び賠償金の費用は検討はつかないが、仮に同額かかるとして、24億円である。最近の小平市の土木費は、毎年40億円程度である。都市計画道路には、5億円前後の予算を割当ている。複数年で用地買収を進めれば、予算的には実現不可ではないだろう。他に、駅に隣接するLAWSON100など食品スーパーがなくなってしまうことは課題かもしれない。小平市は、何故、駅前広場だけをつくることができないのか情報公開すべきだ。情報公開することで、再開発が必要ということになるかもしれないし、より実現可能性の高い別の再開発が必要ということになるかもしれない。
以下に現地の状況を写真を載せて解説する。確かに小川駅の西口は狭い。階段をおりると南側に飲食店と北側にセブンイレブンに囲まれた路地が約30mあり、車の乗り入れが出来ない構造になっている。車の乗り入れができる駅前広場の整備は必要と考える人が多いのではないかと思う。107m、30階の高層マンションビル、低層4階の商業・公共施設の再開発案が、建設費高騰で中断したならば、駅前広場のみ整備する案も含めて、再検討するべきだ。大規模な再開発を行うことを前提に都市計画マスタープランに記述するなら、小川駅の利用者を含む、小平市民全体への周知と意見募集をもっと積極的に行うべきだ。
最後に、小平市が公表している小平市の駅の乗降者数を記載しておく。
H24年 駅別一日平均乗降者人員
花小金井駅 53,099人
小平駅 37,164人
一橋学園駅 20,151人
小川駅 28,550人
鷹の台駅 26,272人
青梅街道駅 7,217人
新小平駅 11,191人
小川駅の乗降者数は2万8千人。鷹の台駅と大差がない。人口減少・超高齢化社会を迎えている今、10年以上先を見据えた再開発を住民参加で進めていくことが求められている。
小川駅西口の階段をおりて、正面にある路地で、西側を撮影。左側(南側)に飲食店と右側(北側)にセブンイレブン(写真はうつっていない)と、日本通運の古いクリーム色の建物に囲まれた路地が約30mあり、車の乗り入れが出来ない。正面に見える西武線と平行する南北道路(都道131号線、小川停車場線)も都道であるが非常にせまい。1963年に都市計画している駅前広場の範囲は、駅出口から写真正面の南北道路までの範囲。
写真にうつっている赤い車が見える道路が都市計画道路小平3・4・12号線。小平3・4・12号線の右側(南側)が、たましん。たましんの裏(東側)が都道131号線で、その奥に、小川駅の照明が見える。西武線は、左右(南北)に通っている。写真正面の濃いグリーンの7階建ての建物は2015年に建てられた集合住宅。7階建ての建物から自販機が2台ならんでいるところまでは都市計画道路3・4・12号線が計画決定された予定地であるためセットバックしているのがわかる。以前は1階建ての店舗が通りの前まであった。地権者にも様々な事情があるのだろう。H26年9月に公開された小川駅再開発準備組合の再開発範囲は、右側正面の駐輪場の手前の南北道路までの範囲となる。再開発準備組合は、地権者39名中、32名が再開発準備組合に加入しており、2/3以上の地権者の合意のもとで進められている。再開発範囲がH26年当時と変わっていないならば、昨年建設された7階建ての建物は取り壊すことになる。もし本当にそんなことになれば何たる無駄なのか。都市計画マスタープラン見直し検討委員会でのG委員が、ずばり指摘する「どう考えても出来ない」と言うのは、このような事実からだろうか。
小川駅西口から西側に向かい最初のつきあたりの通り。狭いが都道131号線(小川停車場線)が南北に通っている。通りの右側(西側)は、H26年9月公開された再開発エリアの中に入る。小平市が言う建物が古くなっているというのは、このあたりをさしているのだろうか。余計なお世話ではないか。
左側(東側)の小川駅西口と、右側(西側)の都道131号線に囲まれた土地。都道131号線側から撮影。正面左側の斜めになっているところが小川駅の西口の階段。右側の古い建物が日本通運の建物。この土地の写真の奥(南側)が、1963年に都市計画決定されている駅前広場のエリアにあたる。この状態で何十年も時間が止まったかのように放置されているのは確かにもったいない。この土地の地権者の方の意向はわからないが、どのような方向で再開発されるにしても、駅前の土地は有効利用した方が良い。
H26年9月に公開された小川駅再開発準備組合の再開発範囲の北側。二俣にわかれている先までが再開発範囲。39人の地権者がいるそうであるが、かなり大きな開発範囲になる。現地を歩いてみるとよくわかる。正面の二俣のところの建物は比較的新しい。地権者1人1人に建て替えるタイミングなど事情があるのだ。
なお、次回都市計画マスタープラン見直し検討委員会の日程は、以下の通り。傍聴に行って小平市のまちづくりの行方を見守りましょう。私も傍聴参加、検討しています。
日時:平成28年10月3日(月)午後6時30分~ 場所:小平市健康福祉事務センター2階 第3・4会議室、傍聴は、定員10名まで。
(文責 神尾直志)