小平の住民投票以降に行われた10件の住民投票

小平市で都市計画道路 小平3・2・8号線の見直しの是非を求めて行われた住民投票から、2年と4ヶ月が過ぎた。市長提案による、投票率50%の成立要件がつけられた修正条例により2013年5月26日に住民投票は実施されたが、投票率35.17%で不成立、投票用紙は開票されなかった。開票されなかった投票結果の公開を求めて反映させる会の共同代表が行った情報公開裁判は、2015年9月30日、最高裁で棄却されて、同日、小平市は投票用紙を焼却したため、投票結果を永遠に知ることは出来なくなった。

小平市の住民投票以降、全国の市町村で実施された条例による住民投票を追いかけてみた。

1996年新潟県巻町の原発建設是非を求めた住民投票が実施されてから、2015年9月まで、条例による住民投票は、市町村合併を除くと、31件ある。市町村合併に関係する住民投票は400件程度あるが、これは合併特例法による国の後押しがあったこともあり、2000年前後に集中して行われた。(反映させる会調べ*1)しかし、この4-5年間は行われていない。市町村合併を除く条例による住民投票のうち、小平市以降が、10件とあきらかな増加傾向だ。

条例による住民投票実施件数

なお、大阪市の橋下市長が2015年5月に実施した住民投票は、大都市地域特別区設置法によるもので、性質が異なるものであり、カウントしていないが、住民投票を世に知らしめた例になった。

条例による住民投票は、
①有権者が住民投票条例案をつくり、有権者の1/50の有効署名を1ヶ月(又は2ヶ月)以内に集めて行う直接請求(地方自治法74条によるもの)
②1/12以上の議員による議員提案によるもの
③首長の提案によるもの
に3分類される。

条例による住民投票の場合は、いずれも議会で可決されない限りは成立しない。これらは個別型の住民投票と呼ばれる。地方自治法のに規定による直接請求の1/50より敷居の高い署名数や、地方自治法には規定のない成立要件を定めることで、議会の可決なしで行われる常設型住民投票条例を定めた地方自治体もあるが、常設型による住民投票は過去31件で2件(反映させる会調べ*1)しか実施されておらず、使われない“常設型”になってしまった。表に記載された小平以降の10件もすべて個別型だ。

小平以後10件の住民投票

小平以降に実施された10件のうち、7件は、直接請求または議員提案が住民投票のきっかけとなっており、選挙以外で有権者が直接民意を問う手法として定着してきた感がある。(表の背景が水色)

小平以降で、成立要件に阻まれて開票されなかった例は、熊本市和水町(表の22)と、三重県伊賀市(表の24)の2例があるが、それ以外の8例は、首長も議会も民意を確かめることは重要と考えて成立要件をつけていない。小平市での悪しき例が、首長や議員たちの判断に影響していると信じたい。二度と成立要件によって開票されない住民投票が行われないことを祈る。

条例による住民投票は、日本ではその結果に拘束力がないとされているが、10件のうち開票された8件でみると、5件は、投票の結果通りの方向に政策は進められている(表の山吹色の背景)。なお5件の内4件は、投票結果を受けて首長が政策を変えている。

つくば市の総合運動場(表の30)、愛知県新城市(表の29)と長崎県壱岐市の新市庁舎(表の28) などの例では、民意と感覚がずれた投資、あるいは説明が不十分なまま投資に踏み切ろうとした行政に対して、直接請求や議員提案による住民投票が実施され議論を巻き起こし規模が縮小される方向へ向かっている。また埼玉県北本市 JRの新駅建設(全額市の負担*2)(表の23)のように市長も議会も推進しており議会で計画が可決された(*2)にも関わらず、市長提案で住民投票が行われて、計画が凍結になった例なども出て来ている。人口減少・高齢化社会を迎えて、より抑制的に慎重に政策を進めてもらいたいという民意が現れていると言えるのではないだろうか。

今後も、住民投票が実施されて民意が反映されていくこと、および、選挙で選ばれた首長が、慎重に丁寧に市民と向き合って合意を得ながら政策をすすめていくことを望むばかりだ。

(文責 神尾直志)


参考)*1 国民投票・住民投票調査室、岡本三彦「自治体の政策過程における住民投票」『会計検査研究』No.45(2012.3)表1、鳥取県県民課「条例に基づく住民投票の実施事例」 *2 日本経済新聞電子版 2013/8/13朝刊 関東甲信越

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