小平市都市計画マスタープラン改定【中間まとめ】を読む(その2)、小川駅西口、小平駅北口再開発について

小平市では、現在、小平市都市計画マスタープランの改定を進めており、現在、中間まとめが公表されており、4月25日まで意見募集している。

前回はブログで、都市計画マスタープランの解説と、小平市のH27年度からの取り組みについて説明した。
今回の中間まとめの全体構想で、H19年度の都市計画マスタープランから比較して追加された点のうち、都市計画マスタープラン見直しの過程で、情報公開、意見集約が不足している点についてまとめる。以下が今回の都市計画マスタープラン見直し【中間まとめ】で新たに追加された点だ。

・小平市民等提案型まちづくり条例の活用の推進(P3)
H19年の改定の小平市都市計画マスタープランの際に、参加と協働のまちづくりのため、市民が地区まちづくり準備会や協議会をつくって、建築協定のような自主ルールである「地区まちづくりルール」を作ることが出来る条例であるが、活用事例が1件もない。利用を促進したいという趣旨
・風致地区の見直し(P20)
樹林地、水辺地などで構成された良好な自然的景観を維持するため、都市計画法により条例により規制をかけられるのが風致地区である。
風致地区の指定がH26年度から東京都から基礎自治体に移管されたことが背景にある。
・小川駅西口地区、小平駅北口の市街地再開発事業及び、土地の高度利用(P33)
・あかしあ道りグリーンロード基本計画(P38)
・都市計画道路の優先整備路線について、東京都の第四次事業化計画との整合(P45)
小平3・3・3号線、小平3・4・10号線、小平3・4・19号線と小平駅北口交通広場、小平3・4・12号線と小川駅西口交通広場

この中で、小川駅西口地区、小平駅北口の市街地再開発事業及び、土地の高度利用について、無作為抽出アンケート及び、見直し検討委員会での議論を見ていく。その1で、述べたとおり無作為抽出アンケートの駅周辺の商業地としての形成の要望がとくに高い(P39)、駅前広場の整備についても、要望がある(P40)。駅周辺の再開発については、市民の意向に沿った開発と言えるかも知れない。しかし、土地の高度利用については、無作為抽出アンケートでは取り上げていない。見直し検討委員会の第五回議事要録及び第六回議事要録で、両駅の市街地再開発事業については話題になっているが、詳細には触れておらず高度利用については議論はされていない。H19年改定のマスタープランでも土地の高度利用という言葉は何カ所かに出てくるが、小川駅西口、小平駅北口を高度利用するという記載はない。

いつのまにかに”高度化”になったかと言うと、この10年で計画が進んだことになる。小川駅西口再開発準備組合はH19年に、小平駅北口再開発準備組合はH27年9月に設立されている。市街地再開発組合とは、都市再開発法による再開発の一手法で作られる地権者による組合組織である。開発する地域の土地所有者及び借地権者のそれぞれ3分の2以上の同意を得て、しかも、同意者の所有面積が総権利面積の3分の2以上である場合に、知事の認可を受けて組合を設立し、施工者となることができる。つまり、法律上は2/3の土地の地権者が知事の認可で、裁量をもって施工できることになっており、この10年間で小平市も支援して取り組みを進めてきたのだ。

小川駅西口については、小川駅前周辺地区まちづくりビジョンをH25年につくっている。以下の資料の挿絵の抜粋。

小川駅前周辺地区まちづくりビジョンの法的な位置づけははっきりしないが、小平駅都市計画マスタープランの地域別構想を補完するものと記載がある。小平市の都市開発部 地域整備支援課の支援を受けて、小川駅前周辺の6つの自治会、4つの商店会、小川駅東口にあるブリジストン、小川駅西口地区市街地再開発準備組合の12の代表者で平成24年6月から平成25年3月に4回の懇談会をもって、まとめられたことがわかる。第4回の協議会によれば、周辺市民の地区内の1508件にアンケート配付して36件(回収率2.3%)の意見を集めたという報告があるが回答が少なく周知されているのか懸念される。小川駅前周辺地区まちづくりビジョンには以下のような将来像と方針が書かれている。
将来像
安心して心豊かに暮らせるまち
安全 快適 便利に動けるまち
小川の魅力と活気が感じられる賑わうまち

まちづくりの方針
便利な駅近くで様々な活動ができる「高度に集約したまち」をつくります
地区の中心となる「小川駅前の再整備」を目指します
生活道路の通過交通を解消する「新たな幹線道路」の整備を早期に進めます
まちで活動する人たちが「安全に東西を往来できる道路」を目指します
福祉のまちとして「誰もが安全に移動できる歩行空間づくり」を目指します
賑わいを周りの商店街につなげる「人の流れを生み出すみち」の整備に取り組みます

地元住民の代表や、地権者、商店街代表、近くに工場があるブリジストンまで入って協議した内容なので、一定の地元住民の意志が集約されたものなのだろう。「高度に集約したまち」には、超高層タワー型(100m級)を複合住宅のシンボルとするとしており、さらに、地区計画の導入し、用途地域を見直すことを検討していることがわかる。
検討に要した予算は、H25年度の小平市一般予算決算書付属書類によれば、まちづくりビジョン作成の費用はわずかであるが、都市計画資料業務委託費として、小川駅西口東京都補助金376万円と小平予算で348万円で、合計724万円の公費が使われている。H19年の都市計画マスタープランにはほとんど記載がないのに、小平駅都市計画マスタープランの地域別構想を補完としているということに疑問を感じる。パブリックコメントも行っているが、どれだけの市民が知っているだろうか?小平駅都市計画マスタープランの地域別構想を補完するなら、今回の見直しでもしっかり内容を公開して、見直し委員会でも議論を行い、正式に、小平駅都市計画マスタープランの地域別構想を補完するビジョンとして練り直すべきだ。

さて現在、小川駅西口は再開発されていない。その後の経過で小平市が公開している情報を追いかけてみると、小川駅西口地区市街地再開発準備組合からのお知らせというものがあり、H28年の1月に、「東日本大震災や東京オリンピックなどによる建築工事費高騰の影響を受け、平成 27 年度は事業計画案の見直しを行っているところです。 」という発表をしている。

これ以上に計画を説明している資料を探したところ、H26年9月22日の小平市議会のまちづくり特別検討委員会で、市議向けに説明があって議員向けに配付された資料があった。下記の資料は、委員会の中で配付された説明資料である。小平市のホームページでは公開されていない。委員会での小平市都市建設課の説明を抜粋する。

 

<開発エリアを地図におとした絵は、小平市都市計画マスタープラン地域別構想(案)から小川駅西口再開発を考えるに載せました>
・地下1階、地上30階、建物高さが107メートル、建築面積約4,000平方メートル、延べ床面積は約4万6,600平方メートル
・計画住戸数は約280戸
・収入は、補助金、都市計画道路部分の負担となる公共施設管理者負担金、さらには保留床処分金
・建設工事費が約155億4,000万円で、全体の83.2%。収入は保留床処分金が約118億1,000万円で、全体の63.2%
・補助金の内訳は、国費が約29億円、都費が約10億円、市費が約10億円、計49億円
・公共施設管理者負担金は都市計画道路小平3・4・12(富士見通りから小川駅まで)、国費が約10億円で、都費が約2億円、市費が約8億円
・公共施設として、小川西町地域センターなどを入れる事も検討している。
・小川駅については地権者39名中、32名が再開発準備組合に加入
・建設費155億円が、高騰したため事業が成立しなくなって、事業案を見直ししている。

収支計画の「保留床」というのが住宅部分で、118億円の収入を見越している。ここに280戸ということだと、1戸あたりの平均販売価格が4,214万円ということになるが、建設費が高騰したため、住宅販売価格を上げなくてはいけないが、無理があるため、事業計画を見直すということがわかる。

都市計画マスタープランに話しを戻すと、ここまで詳細な検討と、事業計画があるにも関わらず、都市計画マスタープラン見直し検討委員会でも、議事要録や配付資料を見る限り、小川駅まちづくりの再開発事業を行っているという程度の説明しかしていない。

商業施設、公共施設、プライベートな住居という空間がひとつの建物に収まると、今後の大規模修繕工事などメンテナンス費用と、その分担も心配だ。市費が余計に使われるような事態にならないだろうか?都市再開発法により組合施工で、地権者とともに計画をすすめていいるが、補助金にも市費約10億円、都市計画道路小平3・4・12部分で市費8億円を使うのだ。また駅の利用者は周辺の市民にまで拡がり、その利用者が利用する商業施設であり駅前広場だということを忘れてはいけない。107mの高層マンションとなれば、景観の問題もある。何故、107mの高層マンション案しかないのだろうか?駅前広場案のみの案や、公共施設と商業店舗の2階建て案など、複数案はつくれないのだろうか?投入する税金がそれぞれの案でどれくらいになるか、複数案で示して、市民から意見募集しやすくして、進めることは出来ないのだろうか?

建設費用が高騰して延期になったのだから、都市計画マスタープランの見直し過程の中でも説明されて、市民の駅周辺施設への要望をすいあげて計画に反映する努力をすべきだ。まちづくりカフェ第6号ニュースでも、「小川駅前再開発に関する検討が進んでいると聞いたが、どのようになるのか。個人的には大きなビルは必要ないと思っている。」という声があがっており、再開発事業への説明が足りないことを意味している。

小平駅北口再開発準備組合はH27年9月と準備組合設立は最近だ。小川駅西口同様、都市計画マスタープラン見直しの過程できちんと市民の意見をすいあげてすすめてもらいたい。小平駅北口から、新青梅街道につながり、東久留米市につながる都市計画道路の小平3・4・19号線についても一部の区間が、優先整備路線になった。小平市はH26年9月にアンケートを行っている。優先整備区間になった小平3・4・19上に住む地権者と沿道50m付近の市民312人への市民へのアンケートで、89名から回答を得ており、回収率は28.53%。この中で、P35の沿道の街並みについての回答があるが、回答者は、賑わいのある商業地、マンション、事務所などが建ち並ぶ街並みには否定的で、戸建てが並ぶ住宅地を希望していることがわかる。これは都市計画マスタープランでの無作為抽出アンケートでの駅周辺の商業地として形成のあり方の要望(P39)とは、逆になっている。近隣住民の希望と、駅の利用者全体の希望が異なると言うことを踏まえた土地利用のあり方を、都市計画マスタープランの地域別構想を検討する際に、丁寧に議論して留意して進めていただきたい。

その3では、開発計画と、保全すべき環境が衝突した場合についての、多摩地区の近隣市の都市計画マスタープランとの比較も行いながらブログにまとめたい。

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小平市都市計画マスタープラン【中間まとめ】を読む(その3) 都市計画道路と守るべき自然環境の衝突、近隣都市の取り組み

小平市都市計画マスタープラン地域別構想(案)から小川駅西口再開発を考える

(文責 神尾直志)

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小平市都市計画マスタープラン改定【中間まとめ】を読む(その1)

小平市では、現在、小平市都市計画マスタープランの改定を進めており、現在、中間まとめが公表されており、4月25日まで意見募集している。

都市計画マスタープランとは、何か? ほとんどの人には馴染みがないものだろう。1992年の都市計画法の改正で、18条の2に「市町村の都市計画に関する基本的な方針」として位置づけられ、一般的には、市町村都市計画マスタープランと呼ばれている。市町村の上位計画である長期基本構想や、都道府県の都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(都道府県マスタープラン)に即すものとされているが、国交省の都市計画運用指針(H28年4月改定)のP29によれば、住民に最も近い立場にある市町村が、その創意工夫の下に住民の意見を反映し、まちづくりの具体性ある将来ビジョンを確立する、と記載されており、市民参加が保障されている。対象期間としては、概ね10年先までとされ、10年毎に見直しが行われている。

都市計画運用指針(H28年4月改定)のP29によれば、以下の内容で構成される。

・まちづくりの理念や都市計画の目標
・全体構想(目指すべき都市像とその実現のための主要課題、課題に対応した整備方針等)
・地域別構想(あるべき市街地像等の地域像、実施されるべき施策)

小平市では、昨年平成27年度から見直しを進めており、現在全体構想の案がまとまったところで、4月25日まで意見募集して、本年度いっぱいで、全体構想と地域別構想をまとめる予定で見直しを進めている。

都市計画マスタープランは、小平市の立場で自由につくれるものではなく、出来る事に限界があることは事実だ。「東京都の開発計画だから、小平市には権限がないから出来ない」と、小平3・2・8号線の住民投票の際にも、市長はそのような態度だった。東京都の都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(都道府県マスタープラン)に即してつくらなければいけないとされている。しかし、市町村によって都市計画マスタープランの質は大きく異なり、東京都の開発計画についてどこまで踏み込んで記載するか、市町村の姿勢があらわれる。小平市の場合は、残念ながら、都市計画マスタープランに記載した東京都の開発計画について市民が賛同したアリバイとして、活用している点が目立つ。

例えば、小平市3・3・8号線についての小林正則氏回答小平市3・3・3についての文書質問書及び回答書であるが、いずれも小平市都市計画マスタープランを引用している。多くの市民が開発計画に賛同しているかというとそうではなく、それ以前に計画があることを認識すらしていない人が多く、住民不在の開発計画に疑問を持った私たちの会の直接請求により、小平3・2・8号線については住民投票に至った。前回の平成19年度の都市計画マスタープランの改定の際に、市民の意見を計画にとりいれる努力をして、市民への周知を行えば、別の形になったかもしれない。それだけに都市計画マスタープランに市民の意見を反映することは重要だ。ブログを読んでくださった方は、是非、都市計画マスタープラン中間まとめに意見していただきい。

さて、今回の都市計画マスタープランの改定の進め方に話を戻したい。以下のように見直しがすすめられている。

都市マス_誰がどうやって見直ししているか

市民のニーズ、要望の抽出のため、2,000人の市民への無作為抽出アンケートの実施と、そのアンケート回答者によるワークショップや、まち歩きをおこない、市民が考える小平市の課題や、あるべき姿などの情報を抽出している。その結果を元に、小平市の都市計画課の事務局と学識経験者、まちづくりに関係する4つの団体の代表と公募市民4名からなる小平都市計画マスタープラン見直し委員会で、見直しの方向性を議論し、小平市都市計画課が原稿をつくり、見直し委員会及び小平市議会の都市計画マスタープラン全体構想特別委員会で市議の意見もフィードバックして、今回の小平都市計画マスタープラン改定中間まとめの公表に至っている。無作為抽出という方法は、参加したい市民が参加出来ないデメリットはあるが、無作為であるが故に、市民参加したい人の強い意見に偏らないという意味でメリットもあり、ひとつの考え方であり問題はないと思う。

市民アンケート結果は、内容が充実しており読むのが大変だ。市民の意向をまとめているP49、P50の図を下記に抜粋した。

49ページ-3

49ページの下

50ページ

(※画像はクリックすると拡大します)

この結果からわかることで、主にまちづくりに関係することをあげると、幹線道路の整備(No.6)については満足度、重要度も平均的であるが、自転車や歩行者の通行のための整備(No.8)に改善が必要と考える市民が多い。農地、雑木林、緑地の保全(No.14)や用水(No.15)の保全などは、満足度高く、引き続きの保全が求められている。改善項目としては、駅周辺の商業地として形成のあり方(No.2)は特に要望が強く、その他、駅前広場の整備(No.10)、道路や公共施設のバリアフリー化(No.11)、まちの死角や暗さなどの防犯への対応(No.13)、災害時の避難場所・避難経路の確保や建物の耐震化などの安全性(No.12)など改善を求める意見が多いことがわかる。

その他、自由記述のアンケートの回答が、P78から255名の431件の意見が記載されているが、431件も意見があったことに驚いた。その内容も、共感できるものから、こんな主張をする人もいるのだと思わせるものまで多様だ。多様な住民の意見をまちづくりに反映させることを目的に活動をしているが、このアンケートを読むと、意見の反映は簡単ではないことがわかる。いろんな市民がいるので、市の担当者の苦労がわかる。都合の良い意見を取り入れ、都合の悪い意見は黙殺することも出来るが、多様な市民の意見の反映に努力していただきたい。

なお、反映させる会で行った直接請求による小平3・2・8号線の住民投票についての記述も5件あった(P79、P85、P93に2件、P94)。4件が住民投票の結果が開票されていないこと、市民の声に耳を傾けないのはおかしいという指摘、1件は、3・2・8号線計画を見直して欲しいという趣旨のものがあった。これは、無作為抽出で選ばれた人だけが回答できるアンケートであり、私たちの会の市民が回答したものでないことを改めて説明しておく。

無作為抽出で選ばれた2000人の対象者の中から、希望者による市民懇談会(まちづくりカフェ)を8回行っている。市民であれば誰でも参加出来る形も考えられるが、小平市はアンケート回答者に限定して、参加者の意見が偏らないようにしており、これもひとつの考え方と言える。まちづくりカフェ8回の市民懇談会(まちづくりカフェ)の概要である。

  • 第一回 4グループに分かれ、無作為抽出市民アンケート項目について、重要度が高く、満足度が低いものについて、アンケート結果との違いなどについてのグループディスカッション。
  • 第二回 第一回で議論を深めたい項目についてワールドカフェ方式でディスカッション
  • 第三回 鉄道駅ごとのイメージについて、生活拠点を活性化するアイディア、まちのあり方、商店街の課題、大学とまちの関わり、緑のあり方、居場所作り、自治会の強化、公共交通などのテーマについて、各グループで異なる話題でディスカッション
  • 第四回 前半は小平市でどんな暮らしがしたいか? そのためには何が必要か?、後半は、小平市の7つの駅の拠点ごとのあり方についてグループディスカッション
  • 第五回 小平の魅力だと感じていること、小平の不便さを感じていること、小平の魅力を活かして、どんな暮らしがしたいか?についてディスカッション
  • 第六回 第七回のまちあるきの準備として、地図上で参加者が住んでいるエリアの気になるところ、改善点、こんなことはできないか?などディスカッション
  • 第七回 東西2グループに分けて現地見学のフィールドワークと振り返り
  • 第八回 西側は、新たな西のグリーンネットワーク~みどりでつながる人と人、東側は、あかしあ通りグリーンロード化プロジェクトというテーマで、アイディア出しや、自分が出来る事についてなどディスカッション

参加人数の記載はないが、写真が出ている回の様子を見ると20-30名程度。50代以上の方が多く、男性が多いように見える。参加市民が無作為抽出の市民だけに限定しているにしては、偏りがあるように見えるのは問題であるが、現実参加者を集めるのは難しいのだろう。

次回は、小平市都市計画マスタープラン中間まとめが、無作為抽出アンケートと、まちづくりカフェでの意見がベースになっているか、見直し検討委員会の意見が反映されているか?についてと、主要な開発計画と、保全すべき環境をふまえて、多摩地区の近隣市のマスタープランとの比較も行いながらブログにまとめたい。    

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小平市都市計画マスタープラン改定【中間まとめ】を読む(その2)

(文責 神尾直志)

小平市における都道3・2・8号線の住民投票に関する研究―住民意識調査から「投票率50%の成立要件」の意味を考える―

早稲田大学社会科学部卯月研究室の大学院生福地健治さんが小平市の住民投票に関する意識調査について論文にまとめくださいました。この内容は論文「小平市における都道3・2・8号線の住民投票に関する研究―住民意識調査から『投票率50%の成立要件』の意味を考える―」として、早稲田大学卯月研究室のHPで公開されています。内容について、概要と投票率による成立要件について整理しました。

 

福地さんは修士一年の学生ですが、一度社会に出て大学院に入られており実は私と同世代でした。昨年(2015年)、小平3・2・8号線現地を歩く会に来て下さり、ヒアリングをされました。そのときは、まさかこんなサプライズな論文を準備されているとは知らずに、2016年になって、この論文の話しを聞いたときは驚きました。

福地さんの論文は、株式会社マクロミルのインターネットアンケート調査により、2013年5月26日に行われた小平3・2・8号線計画の住民投票について、小平市の有権者272人に、年代、性別ごとに、住民投票の選択肢「住民参加による見直し」または「見直しは必要ない」のどちらに投票したのか、投票に行かなかった人からはその理由などをアンケートして、小平市が後出しで条例に付け加えた50%成立要件が投票に与えた影響などを分析しています。

小平3・2・8号線の住民投票は、50%成立要件に阻まれて不成立、その後の情報公開裁判でも最高裁で棄却されて2015年9月30日には投票用紙は焼却されてしまったので、もはやその結果は永遠に知ることは出来ず、今更どうなるものでもないのですが、ボイコットを誘発すると言われる住民投票における成立要件が、どの程度のものなのかという視点で、興味深く読ませて頂きました。

成立要件というものが、本当に住民投票のふさわしいのか?これは、大いに疑問です。全国各地で市町村で条例による住民投票が頻繁に行われるようになりました。2015年以降に行われた住民投票の事例ですと、幸い投票率による成立要件は設けられてていません。最近、憲法改正がニュースになっていますが、憲法改正の際には、国民投票にかけられますが、2010年に施行された国民投票法にも、成立要件はありません。

小平3・2・8号線計画についての住民投票に小平市が後出しで付けた成立要件について、小林正則市長は、「住民投票の結果を、市民の総意、市を代表した意見として取り扱うために信頼性・実効性を与えるため」という趣旨の説明をしています。50%以上の有権者が投票に行けば、確かに関心が高いということで、重みがあると言えるとは思えます。しかし、住民投票で問う内容について反対の意見の人にとっては、投票率を下げ成立させないことが最良の選択肢となるため、投票ボイコットという選択を選んでしまうという問題がおきます。以下、福地さんの論文を解説しながら、成立要件の影響を考えて行きたいと思います。

福地さんの論文では、インターネット調査会社の1855人の登録した小平市民のモニターうち、309人が回答しています。投票が行われた2013年5月現在の小平市の有権者からは272人の回答を得ております。272人の年齢構成は、30代と40代で合計52.58%と実際の有権者構成より多く、60代と70代以上は17.3%と実際の有権者構成より少ない。272人のうち投票に行った人は118。住民投票があることを知らなかったので行かなかった人が54、知っていて棄権した人が、100という結果になっています。272のうち118が投票したので、投票率は43.38%となっており、実際の投票率である35.17%より、8ポイントほど高いです。これは、サンプルサイズが272と十分ではないことによるバラツキ(P4によると、最大誤差±5.7%)であるが、回答者が現実の投票でも投票率が高い3~40代が多かったことから、投票率は高い方にふれていると思われます。

投票者の118人のうち76(64.4%)が住民参加による見直しに投票しています(P6)。性別による回答の傾向は「住民参加で見直す」を選んだ人は男37人女39人と大差はないものの、「見直す必要はない」を選んだ人は、女10人に対して、男32人と3倍も男性が多く、年代別の回答の特徴として、20代、30代、50代、60代は、60%以上が住民参加による見直しを選択したのに対して、40台は、50数%だけが住民参加による見直しを選んでいます(P6)。男女比別、年代別から、40代の男性が、もっとも見直しに消極的という傾向があることが読み取れます。40代後半の1人の男性としての自分の意見ですが、道路計画の南北の状況や、事業認可に向けた手続きが直前まで進んだタイミングでの変更がいかに難しいということを知っての選択の傾向のように思えます。いろいろな社会の仕組みの矛盾や理不尽さを知りながら、仕事に責任をもって感情を抑えて働いている自分を含めた40代男性ならでは傾向であると感じました。これは私の私見です。

住民投票があることを知っていて投票にいかなかった人の100人(35.6%)の投票に行かなかった理由の調査結果は興味深いです。「①計画を見直す必要がないから」28「②投票しても不成立になる(投票率が50%に満たない)と思ったから」34、「③自分とは直接関係がないから」が23、「④その他」が22。回答は107(P7)。回答者は100なので、重複が7ありますが、①を選択した人は、見直しは必要ないを選択するための「投票ボイコット」の選択が28(28%)、②を選択した人は、どうせ投票に行っても不成立となるからという「あきらめ」や「しらけ」の理由が34(34%)、併せて、59(59%)(①と②の重複が3人いるため①と②の和より3少ない)が、成立要件の影響で、投票に行かないという選択をしてしたということを意味しています。

仮に50%成立要件がなければ、これらの59人のうち投票に行った人は多くいたでしょう。59人は、272人はアンケート回答者の21%にあたります。投票率を十分に引き下げる効果はあったと言えます。実際の住民投票の投票率は35.17%でしたので、仮に+21%アップなら、56%となります。そこまで大きく投票率に影響することはないにしても、住民投票の直前の2013年4月に行われた市長選挙(投票率 37.28%)や、直後の6月に行われた都議選挙(投票率 37.27%)の投票率は、軽く越えていたとは言えるのではないでしょうか。

なお、福地さんの論文では、アンケート回答者272人を、住民投票当日の有権者145,024人全体に割り当てて、①と②の理由で投票にいかなかった人の比率から、50%成立要件がなかった場合はどうなったかについて一定の仮定をもとに、投票率と得票率を試算しています。 詳しくは15ページから16ページをご覧下さい。アンケート結果の概要は以下の図にまとめました。

福地さんの調査結果概要

福地さんの論文 インターネットアンケート調査結果の概要

福地さんの論文から、住民投票に投票率による成立要件をつけると、住民投票で問う内容について反対の意見を選択したい人にはボイコットを選択させ、さらに不成立になるという「あきらめ」や「しらけ」から投票に行かない人を増やし、投票率を下げるということが明らかになりました。そもそも日本では、条例による住民投票結果には、拘束力はないとされています。住民投票を実施した結果の中身を見て、首長がその結果をどう扱うか、判断すれば良いのです。

小林正則市長が言うように、住民投票結果を、「市民の総意、市を代表した意見として取り扱うために信頼性・実効性を与えるたいので、基準を設けたい」という場合はどうすれば良いかというと得票率を成立要件や尊重要件に設定するという考えがあります。二つの選択肢の中で、どちらか多い方が、投票資格者全体の何%を締めているかという得票率を基準にするという考え方です。当然、投票結果の開票が前提になります。

福地さんの論文によれば、住民投票の先進国のドイツでも1955年は50%成立要件による住民投票が行われ、その後20年間制度は維持されたが、多数の投票ボイコットが住民投票制度を形骸化したため、1975年に、「全有権者の30%の絶対得票率」に変更されたことが書かれています。現在では、州によって様々な得票率による基準が定められているようです。詳しくは、P17をご覧下さい。

なお、日本でも住民投票に、得票率による尊重要件を設けた例として、2015年の2月に行われた所沢市の小中学校の除湿(冷房)工事についての賛否についての住民投票の例があります。詳しくはコダイラー通信 市議選特集号の4ページ目に「小平以降の住民投票は?」としてまとめていますので、よろしければご覧下さい。

最後に、このようなアンケート調査を実施頂き、論文にして公表してくださった卯月盛夫先生と福地健治さんに深く感謝したいと思います。そして、この論文が多くの人の目にとまり、これからも全国の市町村で実施されるだろう条例による住民投票に、投票率による成立要件が二度とつけられないことを強く望みます。

(文責 神尾直志)

「街づくりにおける住民投票 -2000年以降の事例からみる住民による多数決のあり方に関する考察-」

早稲田大学法学研究科公法学専攻行政法専修の大滝優介さんに修士論文を送って頂きました。
「街づくりにおける住民投票 -2000年以降の事例からみる住民による多数決のあり方に関する考察-」(大滝優介)

大滝優介さんは、小平住民投票の情報公開裁判の傍聴、3・2・8号線現地を歩く会、勉強会などに参加されていた学生さんです。この2016年3月に修士課程を卒業されるそうです。

P3~P4の序論にある通り、厳しい成立要件が付された住民投票をより良い街づくりに活かすための活用法を検討することを目的とした論文で、小平市住民投票が、住民投票を修士論文のテーマとするきっかけになっています。街づくりに関する近年の18件の住民投票を丁寧に調べて考察した内容になっています。法学部で、憲法、地方自治法など、行政法をしっかり勉強した人の論文で、読み応えがあり勉強になります。以下、概要です。

第1章では、憲法95条による住民投票の解説、合併特例法や、2015年の大阪市の大都市地域特別区設置法による住民投票などが、憲法92条にある地方自治の本旨に則しているかという視点で解説しています。条例による住民投票は、有権者による直接請求、市町村長による提案、議員の提案の3種類(P10)があることに触れて、90年代後半から地方自治法の条例による住民投票が行われるようになり、事例が増えたことから、政府の地方制度調査会で、条例による住民投票が取り上げられて、とくに2011年には第30次地方制度調査会では、大規模な公共施設の建設について地方自治法の住民投票の既定を盛り込む改正案が示され、法律改正の動きもあったが結局は住民投票については盛り込まれなかったことなどの記載があります。(P17)

第2章では、住民投票とは何か、論点ごとに踏み込んでまとめています。間接民主制・二元代表制、地方選挙との関係について(P20)、アンケート、公聴会・住民説明会、審議会、パブリックコメント、市民会議、ワークショップなどの他の住民参加の仕組みとの関係(P21)、都市計画と住民参加の関係(P22)などについて書いています。さらに、住民投票で必ず話題になる論点である、結果の拘束力、投票資格者、対象事項、成立要件、住民の政策判断能力と情報提供などについて憲法や地方自治法などに基づいて記載をしています。

第3章では、2000年から2015年5月までの18件の「街づくり」に関する住民投票の事例を個別に解説しています。ここでは、18件の住民投票を3つのカテゴリに分類(重複もあることを前提に分類)しています。(P32)

  • 抵抗型 —政策のマイナス面を強く拒む形で、中止に追い込むことを目的とした住民投票
  • 利用型 —長や議会が自らの目的のために実施する住民投票で、さらに3つに分けて、(1)責任転嫁型、(2)お墨付き型、(3)反論封殺型に分類
  • 政策優先是正型 —ニーズの低い政策を中止させて、別のニーズの高い政策を行わせることを目的とした住民投票

さらに、18件の住民投票が成功といえるかどうかについて、以下6つの観点で、評価を行っています。

(イ)議論の成熟性
(ロ)他の住民参加制度とのすみ分け
(ハ)制度設計の適切性
(ニ)情報提供の適切性
(ホ)投票率の高さ
(へ)住民投票の結果が政策に反映されたか

小平市の住民投票は、住民の抵抗型であるが、成立要件をつけることによって、行政によって住民の意見を反論封殺する利用型(P61)となったと分類されています。小平市の住民投票の評価については、詳しくはP62以降の記述を読んでください。行政の住民参加の機会と情報の提供が不十分な場合には、住民側の精力的な意見表明、情報収集及び提供を行う必要があるとされているが、抵抗型ではこのような形になることは当事者としてよく理解できます。制度の適切性の観点からの小平市の分析も興味深いです。事業負担が全額東京都であることから、関心度が低まるとしながらも、建設地区が小平市で住民には実質的に計画見直しを求める手段がない以上、住民投票することは問題ないとしています(P67)。この点は、都市計画法における都市計画の権限や都道府県と市町村に役割に触れて、もう少しひもといて解説をしてもらいたかったと感じました。なお、その他の住民投票についても、詳細に調べて分析し、踏み込んだ意見が書かれており、興味深い内容になっていますので、是非、目を通して頂きたいです。とくに、多数行われている市庁舎建設に関する住民投票について、住民は短期的な見地から判断しがちになることと、予算に関しては本来的には議会の専決事項であることから住民投票の対象としてふさわしくないとしていることが興味深いです。住民参加について否定しているのではなくて、住民投票がなじまないという意味であることは言うまでもありません。

第4章が総括。第3章の分析から得られたこととして、以下を示しています。
(1)迷惑施設建設に対する住民投票であっても、計画がある程度具体性・実現性を帯びていれば投票結果が賛成多数になり得ること
(2)投票の結果反対多数となった後のプロセスを明らかにすることで、住民投票がより良い政策選択を導きうること
(3)住民投票の事業一次停止機能を用いた上で設問の問い方を工夫すれば、住民投票が政策の1と0の間を問い直す契機になること

「計画中止を前提とした住民運動」「複雑な問題解決に向かない手段」というイメージから脱却して、「より良い政策を選び取るための住民投票の位置づけ」と自治体全体で考え直す時期に来ているとしてまとめています。

(3)については、小平市の住民投票の住民参加による見直しの是非を問う、選択肢のことでもあり、わかりにくいと言われた選択肢でありますが、このように取り上げてもらったことは、うれしく思います。最後の結びには、現在の私たちの会の取り組みである街づくりに関する学習会や、3・3・3号線計画に対する取り組みについても触れて、エールを送ってくれています。(P99)

住民投票については、研究しているジャーナリストや学者はいるが、多いとは言えないし、広く知られているとは言えません。18件の住民投票に対する深い調査と、高いレベルの考察がなされているのと、正解を導くのが難しい、あるいは正解がない住民投票というテーマに対して、踏み込んだ見解を書いているのが素晴らしいと思いました。

最後に、大滝優介さんに心からの感謝の気持ちを述べつつ、社会人になってからもいろいろな社会の矛盾と向き合いながら、この研究成果を忘れずにご活躍されることを期待したいと思います。

(文責 神尾直志)

2015/12/13シンポジウム&意見交換会「5万人の投票用紙は焼却された」報告(前半)

大変遅くなって申し訳ありません!

昨年12月13日(土)に開催したシンポジウム&意見交換会「5万人の投票用紙は焼却された」の報告(前半)をアップします。

 尾渡弁護士には、小平住民投票情報公開裁判をふりかえり、第一審、控訴審、上告審のそれぞれの主張の論点、判決の問題点について、わかりやすく解説していただきました。判決への所感として、この判決が、今後の住民投票で、自治体側が結果を見せたくない場合に、そういう規定を設けて公開や開票をしないで結果を闇に葬り去る道を開いてしまったのではないか、 また、せっかく住民投票等により自分たちのまちのことは自分たちで判断しようという住民自治が行われ、そういう動きが他の自治体にも波及している中で、こういう動きの発展に水を差す判断なのではないかと懸念を示されました。

 中島弁護士は、住民主権の発現の場、地域住民の主権行使の場としての住民投票の重要性に言及し、最高裁判決で住民投票の非公開が認められてしまった現状で、「まだできること」として、小平市自治基本条例の「市民投票制度」についての条文中に、市民投票が実施された場合は、「速やかに開票を行い、その内容を告示する」という文言を加えるように改正することを提案されました。

 また、小平以降に行われた北本市、つくば市、小牧市の住民投票では、いずれも成立要件は付けられずに開票された結果、多数を占めた住民の意思が政策に反映されたことを指摘し、小平市でも結果が公表されていれば大きな影響力をもったであろうし、住民投票に成立要件を設けることには非常に慎重にならなければいけない、と主張されました。

資料「最近の住民投票」(pdf)

 武田先生は、判決は住民投票の結果を法令秘情報としたが、住民投票の結果は秘密として保護に値しない、それでは「市民の声を聞きたくない」行政を保護するということになってしまう、と、裁判所が市民の知る権利でなく市の利益を擁護したことを批判されました。また、情報公開は原則開示の原則、つまり、行政情報は公開するのが原則であり、市側が公開できないと言うなら、非公開情報であることの立証責任は市の側にあるが、判決では行政に有利になるよう立証責任を軽減していると指摘されました。

  また、提案として、投票率によって住民投票の成立要件を決めることはおかしいと徹底的に批判すること、 住民投票の結果は焼却されたが、それでは市はこの計画に市民の意見をどうやって反映させるつもりなのかを問い続けていくことを挙げられました。また、住民の意見を政治や行政に反映させるには、個々の住民の熟慮と参加が不可欠であり、このシンポジウムのように集まって話し合う取り組みを続けることしかないと結ばれました。

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