第一回「都市計画はだれがどのようにつくっているのか?」

小平市市民学習奨励学級「市民の思いが実現するまちづくりへ」第一回「都市計画はだれがどのようにつくっているのか?」の報告をアップします。都市計画への市民参加を考えようとする時に大変力になる、充実した講演でした。報告をお読みいただけると幸いです。

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小平市市民学習奨励学級「市民の思いが実現するまちづくりへ」第一回
「都市計画はだれがどのようにつくっているのか?」

2015年11月7日(土)
講師:伊藤久雄氏
出席者:23名

講師の伊藤久雄氏は、東京都建設局の職員として36年間勤務された。東京都の職員時代から「東京ランポ」、(現NPO法人まちぽっとの前身)の創設などに関わり、まちづくりに関して積極的に活動をされてきた。現在は「NPO法人まちぽっと」の理事として、市民とともに地域のいろいろな課題や可能性を考え、さまざまな提案及び実践を行っている。

都市計画はだれがどのようにつくっているのか? さらには、だれがつくるべきか? というテーマで、以下のような内容で、都市計画法や事例についてご説明いただき、都市計画法の改定や地方分権改革による市町村(自治体)の役割や、住民の意見の反映の仕組みについてお話いただいた。

1968年改正の都市計画法が、現在の都市計画法のベースになっている。市街地の拡大をどうコントロールするか、という視点でつくられているが、うまく運用されているかというと、そうではない点が多々あるのが現状である。

都道府県または市町村が都市計画をつくるのだが、都市計画法の15条に両者の分担についての記載がある。都道府県には都市計画区域の整備、開発、保全の方針を定めることが求められ、市町村は都市計画マスタープランをつくることが求められている。それぞれ約10年に一度見直されている。小平市でも平成28年度中を目処に、都市計画マスタープランの見直しが行われている。

土地利用についての大きな方針を決定する「線引き」といわれている区域区分の決定は都道府県が行う。(現実にはそうなっていないが)概ね10年以内に計画的に市街化(宅地化)していくべき市街化区域と、宅地化を抑制する区域である市街化調整区域に分ける作業を都道府県が行う。東京都は、小平市全域を、市街化区域に指定している。

市町村は、全エリアの用途地域を決定する。市内全域が第一種低層住宅専用地域、商業地域、工業地域など12種類に分類される。それぞれの用途地域ごとに建てられる施設の種類や建物の容積率、建ぺい率、高さなどの制限が定められている。その他、特別用途地区、風致地区、地区計画などは、市町村が独自に決定することが出来る。これらが都市計画図(小平市HPで公開 、また、市役所一階で販売されている)に記載されている。

小平市には特別用途地区はない。地区計画は6つある。地区計画は、それぞれの地区の実情や特色に合わせた計画づくり、まちづくりを実現する制度で、市が都市計画として定めることができる。

都市施設の計画については、都道府県と市町村で行う。広域にまたがる都市施設、根幹的都市施設については都道府県が決定する。それ以外の都市施設は市町村が決める。都市施設とは、道路・鉄道、公園、緑地、ガス・下水道施設、河川、運河、病院、保育所、市場、と畜場、火葬場、団地などのことをさす。

都市計画道路については、複数の市町村にまたがるものは都道府県が行うことになっている。土地区画整理事業、市街地再開発事業は面積によって異なり、土地区画整理事業は、50ha超は都道府県、それ以下は市町村が決定し、市街地再開発事業は、3ha超は都道府県、それ以下は市町村が決定する。

都市計画手続きの流れとしては、都市計画を国家高権的に考える流れと、市民参加を促進しようとする流れとがある。

都市計画に市民参加を入れていこうという流れは、私が思うには5点ある。

  • 1980年に地区計画制度が創設された。
  • 1992年の都市計画法の改正で、市町村は都市計画マスタープランをつくるようになった。都市計画法で、住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとすると、初めて直接的に住民の意見反映の手続きを入れることがうたわれた。(この時、市民で都市計画マスタープランを作り、市町村や区の都市計画マスタープランに反映させようとしたのが「東京ランポ」の最初の活動だった。
  • 2000年の地方分権改革の時の改正で、地区計画に関する住民または利害関係人からの申し出制度がつくられた。それまでは、小平市の地区計画は小平市が計画していたが、小平市民が申し出できる制度ができた。
  • 同じ年に都市計画法の改正で、都市計画決定手続きを条例によって付加できるようになった。
  • 2002年には、土地所有者の2/3以上の同意をもって提案することができる都市計画提案制度が創設された。

都市計画マスタープランを実現していくためにはまちづくり条例が必要。小平市には小平市民等提案型まちづくり条例があるが、運用の報告は、ホームページでは見当たらない。市が「参加と協働によるまちづくりのモデルケース」としている「小川駅前周辺地区まちづくりビジョン」が1件つくられただけだ。

2000年の都市計画法改正で、都市計画決定手続きを条例によって付加できるよう定められたが、小平市の小平市民等提案型まちづくり条例では、都市計画決定手続きの付加は定められていない。国分寺のまちづくり条例では、都市計画の決定又は変更の際の縦覧期間を21日間に延長し(都市計画法では2週間)、説明会の開催を義務づけている。

都市計画提案制度ができて、多摩地域では、ゴルフ場の区域区分の変更の申し出があり、杉並区では、外環の2と呼ばれる都市計画道路の廃止についての提案があったが、どちらも東京都の都市計画審議会で認められなかった。

多摩26市でも12市がまちづくり条例をつくり、地区計画申し出制度を設けたが、現実に地区計画が申し出された例はない。23区では杉並区と練馬区で申し出があったが、実現したのは練馬区の2件のみ。

〈都市計画提案〉提案が少ないのが現状。都市計画提案制度での、規制強化や計画廃止の提案がこれからは必要と考える。しかし、提案には地権者等の3分の2以上の賛成が必要と大変ハードルが高い。

〈地区計画申し出制度〉住民発意の計画作りは、どこでも難しくなっている。その背景として、大都市では住宅地域での地区計画はほとんどなくなり、大部分が都心区駅周辺の開発型地区計画となっていること。まちづくりNPOなどの活動が期待されたが、実際には難しいこと。自治体職員の短期間での異動によるモチベーション低下もある。

これから人口減少社会、都市縮小時代を迎える。国家高権的な考え方は時代にそぐわないが、市民によって関心、考え方、さまざまであり、都市計画における市民の合意をどうはかるかは難しい。新たな合意形成システムが必要だ。無作為抽出の市民による市民討議会などさまざまな方法が考案されているが、まだ社会実験の段階だ。

東京都は長期ビジョンの中で多摩地区では集約型都市構造をめざすと言っているが、多摩で本当に成立するのか疑問に感じる。饗庭伸さんは、都市は一方向に縮小するのではなく、スポンジ状に縮小していくと言う。これまでの用途地域純化をめざすゾーニングではなく、小さな空間単位の中に、都市と農と土と自然が適切さを持ったバランスで存在することを目指す土地利用コントロールにならざるをえないとも言っている。従来の土地利用コントロールでいいのかは課題だ。生産緑地法、空き家対策特別措置法などともからんでくる。

こういう時代になればなるほど、都市計画提案団体、まちづくりNPOの出番だ。具体的な都市計画提案(なかなか難しいが)、地区計画の申し出、まちづくり協議会など、提案し、実践する地域に根ざした団体が重要。緑や玉川上水など、テーマ型の団体は多いが、これからは市全域に関心を持つ市民団体、市民組織が必要ではないかと思う。

文責:市民学習奨励学級企画チーム


都市計画の実施主体

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以上(奨励学級企画チーム)