小平3・4・10号線の費用対効果

小平3・4・10号線とは?

小平3・4・10号線とは、小平大和線と呼ばれており、東大和駅北口から西側に向かう東大和市の「ゆりのき通り」から、小平市の栄町に入り、小平市内では、「こぶし通り」と呼ばれ、小川駅の南側で、西武国分寺線、拝島線、府中街道と交差、小平6小の南側を通り、多摩湖線と交差、仲町の閑静な住宅街を通りルネ小平の南側であかしあ通りまでが、都市計画道路として計画決定されている。現在完成しているのは、栄町から、小川駅西口を南北に通っている富士見通りの交差部までである。

2016年11月20日と21日で、小平都市計画道路3・4・10号小平大和線の都市計画変更素案の説明会が実施され、小平3・4・10号線の富士見通り交差部から、小平6小の南側まで約380mについて、計画幅員を20.5mから最大33.5mに拡幅して、西武国分寺線、西武拝島線の踏切交差をアンダーパスとする変更素案の説明が行われた。この工事は小平市施工である。

小平市の都市計画図_市報こだいら2016年5月5日より_小平3・4・10号線

小平3・4・10号線。こぶし通りが、栄町から、富士見通りまで開通したのは平成24年で、栄町など小平西側あるいは東大和市の住民の小川駅西口までの動線が確保された。朝9:00から18:00まで30分に1本走っているコミュニティタクシーのブルベー号の栄町ルートにもなっており、150円で利用出来ることもあり住民の足になっている。小平3・4・10号線の富士見通りまでの開通は、整備効果があったといえる。

小平3・4・10号線が西武線に対してアンダーパスで整備される!?

しかし、富士見通りから西武線国分寺線、拝島線を交差して、府中街道までつながる計画、畑と低層住宅がならぶ、このエリアを地下化する変更素案にはあまりに大袈裟な工事だ。地下案にする理由については、小平市に確認出来ていないが、小平市議から間接的に聞いたところ、今後整備する道路が線路と交差する場合は、アンダーパスか、オーバーパスにすることで、踏切を作らないという東京都の整備方針があるとの説明だった。

小平3・4・10計画概要図

このあたりを知っている人から見ると、地下工事にするほどの交通量があるのか?と思う人も多いだろう。このエリアに、この大袈裟なアンダーパスを作ったら、小平市がつくった21世紀最大の負の遺産になるのではと危惧するのは私だけだろうか?

こぶし通りと富士見通りの交差部

上の写真は、こぶし通りと富士見通りの交差部の現在の様子である。写真に写っている電車が西武拝島線で、西武線を小平3・4・10号線アンダーパスで通過するため、地下工事となる。小平3・4・10の予定地にある畑_図入り

富士見通りから小平3・4・10号線の予定地を東側にみた写真

小平市が東京都に優先的に整備する路線として申し出た

2016年3月に策定された東京における都市計画道路の整備方針(第四次整備方針)小平市施行で整備される優先整備路線に指定された。小平3・4・10号線を優先整備路線としたのは、小平市から東京都の申し出によることが、第四次整備方針の検討過程の資料でわかっている。

第四次事業化計画_小平市が要望した優先整備路線

小平市があげている優先整備路線とする理由は、『鉄道により東西に分断されている小川駅周辺地区をつなぐ「まちの主要な幹線道路」であり、周辺の生活道路への通過交通量の減少による安全性の向上と、当該地区の安全・安心な災害に強いまちづくりを推進する。』としている。

小平3・4・10号線(こぶし通り)の現在の交通量と将来予測は?

まちの主要の幹線道路という説明に違和感を覚える。こぶし通り、小平3・4・10号線、都市計画道路ではあるが交通量が多くはなく、生活道路に近いと行っても良い。小平市が平成20年度に作った「小川駅西口地区整備検討業務委託報告書」によると、富士見通りの予定の交通量は、1日あたり3,415台。この報告書は、平成20年度のもので、まだ、小平3・4・10号線と富士見通りがつながっていなかった時代の調査結果であるが、3千台程度の交通量なのだ。

小川駅西口地区整備検討業務委託報告書_自動車交通量_説明

現在の富士見通りとこぶし通りが開通した状態の交通量を小平市に問い合わせたところ、以下のような回答があり、12時間あたり約3,000~3,500という回答だった。昼夜率を1.45とすると、1日あたりが約4,350~5,075程度となる。

小平3・4・10号線交通量

将来的に、道路ネットワークが完成したら、1日あたり9,000台強となる予測を持っているとの回答であった。今回の整備で、小川東町を通り、多摩湖線の西側の市役所通りまでは開通になる。しかし恐らく1日あたり9,000台の交通量にはならないだろう。道路ネットワークの完成とは、どのこまで完成することを言うのかが不明であるためなんとも言えないが、それ以前に人口減少が始まり、交通量の減少が始まるのではないだろうか。多摩湖線より東側の仲町のエリアは住宅が建ち並んでおり用地買収費用も膨大となるため財政的な事情から着手できないと予測する。なお、東京都と26市町村で策定した「東京における都市計画道路の整備方針(第四次事業化計画)」において将来交通ネットワークの検証項目の中の、検証項目5として、将来交通量が1日6,000台以上となることとされている。現在は、6,000以下であるが、将来は、9,000台となるので、整備が必要という考え方が釈然としない。小平3・4・10号線について私の行った質問と回答全文PDFはこちら

小平3・4・10号線の総事業費は不明!費用対効果も検証されていない

総事業費と、その内訳について確認したところは、新小金井公園とグリーンロード立体の交差部が約725mで、95億円であるが、小平3・4・10号線は530mであるため、95億円より少額になるとの回答を得た。その内訳は、国の補助金が50-55%。都の補助金が国の補助金を除いて25%程度ということで、残り25%程度が小平市の負担ということであるが、仮に総工費が95億円なら、市の負担は23億円になる。一般予算600億円の小平市にとって小さな事業費ではない。国、都の費用も税金または国債であり決して見過ごせない大きな費用負担である。また事業説明会を行っているのに、総工費が概算でも算出されていないのは問題だ。

小平3・4・10号線費用

費用対効果について小平市の回答からは、定量的には費用対効果は、現時点でもっておらず、事業化に向けた手続きを進めながら算出とある。整備効果として、2中通りや中宿通りに進入する通過交通の減少による渋滞緩和、歩行者や自転車の安全性、快適性の確保、小川駅西口地区で取組が進む再開発事業と連携したまちづくりの促進や、災害時の安全な批難路の確保による防災機能の向上、などをあげている。2中通りに車が進入することがマイナスだとは思えない。本当に少しの利便性のために、数十億の予算が使われることになるのだ。また事業説明会を行っているのに、その費用対効果も検証されていないことに、疑問を感じる。総事業費の算出もされていない、費用対効果の検証もされていないまま、都市計画道路の整備が進められる実態は、現在の都市計画法が行政にとって都合よく出来すぎているわけで、もう少しハードルをあげるように改正されなければ行けない。

小平3・4・10号線費用対効果

2中通りとは、小平3・4・10号線の約100mほど北にある小平2中の南側の道路で、富士見通りから、府中街道に抜けることが出来る。途中、西武線をふみきりで交差して接続される道路で朝のラッシュ時には、多少渋滞しているが、府中街道に抜ける道路として機能している。小川駅西口からは、300m以上離れており、再開発と連携したまちづくりというのも無理がある説明だと思う。小平3・4・10号線(こぶし通り)と富士見通りがつながっているため、西側からこぶし通りを走ってくる車は、小平十三小南交差点から、テルメ小川がある青梅街道の交差点に抜けるか、富士見通りを南側に行けば青梅街道にも行けるので、機能は果たしている。このように、こぶし通りから南側の青梅街道に東側の府中街道にも抜ける道路が用意されており機能している。巨額な費用をかけて、わざわざ地下工事を行って、このエリアを府中街道まで整備する理由がわからない。

小平3・4・10号線動線分析

都道131号線が行き止まりになるため歩行者、自転車による南北移動が不便になるデメリットも

また、小川駅に西側の南北道路である都道131号線という生活道路があるが、こちらの道路は、青梅街道側から北側に向かう歩行者、自転車も多い。小平3・4・10号線が地下になると、この南北道路は分断されて、西側の富士見通り側にバイパスすることになる、不便になることは間違いない。

都道131踏切から北側をとる

都道131号線は、この写真の道路で、西武拝島線の踏切との交差部を北側に撮影した。写真の左側にある白い建物の奥(北側)を左右(東西)にアンダーパスで、小平3・4・10号線は通過する計画。

小平市が平成20年度に作った「小川駅西口地区整備検討業務委託報告書」によると、都道131号線の歩行者、自転車の数は12時間あたり、1030人、1,890台いる。地下案にすることでバイパスが余儀なくされる。つまり現在こぶし通りの12時間あたり3,000~3,500台の車両のために地下道をつくり、歩行者、自転車の1030人、1,890台を犠牲にすることになるのだ。

小川駅西口地区整備検討業務委託報告書_歩行者、自転車

なお、小平市は小平3・4・10号線の富士見通りから府中街道まで、沿道50mの範囲で、H26年2月に、小平市は3・4・10号線の約380m区間の沿道50m範囲でアンケート実施して結果を公表している。またH27年/1/30、31には西部市民センターでオープンハウス実施して、地元の人への周知活動も進めている。この点は、都施行の都市計画道路と比べると丁寧にやっている。

アンケート結果によれば、周辺居住者255名と地権者31名に対して、69名(24%)の回答、計画を知っているが95%であった。なお回答者 60代、70代以上で59%、男性の回答者が71%であった。アンダーパス望むは55%、望まない8%、オーバーパス望む14%、望まないが40%であることからアンダーパスも地元の人の支持を得ていることはわかる。アンケート自由記述の内容46件からは、早期実現希望17件、不要7件と実現希望が多いのも事実だ。アンケートに答えて、早期実現希望と答えた方は、95億円近くの税金がかかるかという事実を知っても同じ回答をしただろうか。それから7件、約30%の住民が「不要」という意見を出していることも忘れてはならない。

沿道住民からすると、側道から府中街道に抜けられるのはメリットと考えた人いるのだろうか。しかし、道路の整備は、沿道の住民だけのものではない。税金が使われる公共事業であるので沿道の住民も含めて、小平市や東大和市の利用者全体を考えた検討が必要だ。未整備の都市計画道路全体に言えることであるが、東京都を除く他の都道府県では、廃止も含めた見直しを行っている中で、東京都だけ整備に邁進し、小平市も熱心に東京都に付いていこうとする姿勢に疑問を感じる。小平3・4・10号線が優先整備路線の中でも最も検討が先行していることにも疑問を感じる。多額の費用をつぎこむなら先に小川駅西口の再開発を先に行うべきだ。現在の準備組合が進めている高層計画の案には議論の余地はあるが、小川駅再開発そのものはニーズはあるわけで、西口再開発と乗り入れ道路である小平3・4・12号線の整備に注力すべきだ。

小平市が行っている小平市公共施設マネージメント推進計画でも、この10年間は公共施設の面積は±ゼロで、増やさないという方針を出している。これは人口減少社会によって税収減少が避けられない中で、維持・補修費用の負担が膨らんでいく公共施設の整備を抑制していこうという動きである。未整備の都市計画道路も公共施設であり、本来全く同じように考えられるべきである。順番に整備していくという方針から、東京都、近隣都市とも協議をしながら市民参加の上で、見直しの議論が始まる時期に来ている。

(文責 神尾 直志)