どんぐりと民主主義 —都道3・2・8号線問題から考える(1)

昨年12月8日に開催した中沢新一さんと國分功一郎さんのシンポジウム「どんぐりと民主主義──都道3・2・8号線問題から考える」の内容を毎日連載でご紹介します。

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どんぐりと民主主義
──都道3・2・8号線問題から考える

中沢新一×國分功一郎

2012年12月8日
小平市福祉会館ホールにて開催

今後の都政と小平の道路

國分:みなさん、こんにちは。國分功一郎と申します。どうもよろしくお願いします。今日は、こちらにいらっしゃる中沢新一さんとともに、小平市を揺るがしている──と僕は思っているのですが──、3・2・8号線道路の建設問題について考え、そしてそこから広く、民主主義や住民参加について考えていきたいと思います。

中沢:ここのところ、日本の木が、森の木がとても危険な状態になっているということがありました。福井の方でご神木が切られるという大変危機的な状況があり、僕がやっているグリーンアクティブに「なんとかこれをくい止められないか」という連絡が来た。その時は、地元の人たちと一緒に活動して、伐採は止まったんです。

ただその後も、たとえば四国でのことですが、ご神木に除草剤を入れて枯らし、その後で「このご神木は枯れてますから、私のところで切ってあげます」と誰かが言いに来て、切ってしまうということがあった。どうも木材が欲しいみたいなんですが、こういうことが起こっている。これはご神木に関することですが、それだけじゃなくて日本全体で森が荒れ始めているんです。

そういう問題にずっと関わってきた中で、小平で似たような問題が起こっていると知らされ、やっぱり本気でこれに取り組まなければいけないと思ったんですね。

そうしたら、國分さんがこの道路計画に反対して、住民投票を進める運動を応援しているということをたまたま聞きました。ここのところ僕は國分さんと対談しているんです。テーマは自然哲学です。これから人間はもっと自然哲学を深めていかなきゃいけない。それは勉強だけじゃなくて、生活の中でも、食べ物を食べること、生活すること、そういうことの全体の中に自然の問題っていうのを大きく取り込んでいこうって話なんです。でも、ただ話し合うだけじゃなくて、行動に移していこうじゃないかというのが今回の取り組みなんです。

小平のこの道路建設問題は、これから東京で起こることのとても重大なきっかけになると思います。おそらく猪瀬直樹氏の都政になると、来年から道路計画の進行が進んでいくことになります。

東京にオリンピックを持ってくるという、目標を口実にして、東京に何本かの環状道路をつくり、そこへ抜けさせるための道路をつくるという計画が進行する。

これは今後の自民党政権の大きな方針にもなっていくでしょう。公共事業と言っているけれど、実際は、昔の土木工事に戻ってしまう可能性が大きい。土建と言われたものを大規模に進行させようとしている。ですから、来年から東京の道路問題では、今まで凍結されていたものが復活するということがどんどん起こってくるでしょう。

そして、どうやらその先陣を切っているのが、小平の計画です。これを住民がどう考えていくのかが問われている。

中沢氏1自民党政府になったら、公共事業という形で、他の計画も復活してきちゃうでしょう。僕は、別に民主党のことをほめるつもりはないし、確かにいろいろと失政がありすぎたのですが、公共事業が減ったことは確かです。無駄な公共事業が減ったことは確かなんです。だけど、たとえば笹子トンネルでああいう事故が起こると、「やっぱり、公共事業をやらなきゃだめじゃないか」となる。けれど、あれはメンテナンスの問題なんですよね。ところが、自民党がやろうとしているのはたいてい新規の公共事業です。

新規の高速道路を通したり、新幹線を通したりする工事を大規模に進める、「列島強靱化」と名付けているわけだけど、ここ小平の計画が、小規模だけれどその最初の場所になる。東京都も道路計画をいたるところで進行させるでしょう。小平の計画はその最初の重要なポイントになると思って、僕は國分さんと一緒に運動に取り組もうと持ちかけたんです。

 (写真・加藤嘉六)